”枯れる”というキーワードで”老い”を受容した気分障害(うつ病)
”枯れる”というキーワードで”老い”を受容したと考えられる気分障害(うつ病)の症例を報告します。一流企業の役員で定年間際の方が大腸にポリープが発見されたと狼狽して来院されました。この方は真面目、几帳面で、人生計画も綿密に立てて実行されてきた方のようで、定年後の悠々自適の生活も十分に計画されていたとのことです。ところが、ポリープが発見されたことで人生計画が狂ってしまったと不安、抑うつ気分が高じてしまったようでした。うつ状態に対して薬物療法を施行しますが、焦燥感、抑うつ気分はなかなか良くなりません。そのような状況が続く中でで、担当医がうっかり「あなたは生きる意欲も強くて、人生枯れてないですね。」ともらしてしまいました。そのとき本人は「ああ、枯れるですか。」と驚いたように顔を曇らせました。しかし、その時点から、本人は「こんなはずではなかった。」と担当医に嘆くことが少なくなり、薬の量も減っていきました。これは、自分の人生を順調にコントロールできていた人が”枯れる”という言葉をきっかけに、”老い”という自分の思い通りにならないことを受容して、心の安静を取り戻したエピソードではないでしょうか。
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